「設備」を「戦力」へ|第3回:設備投資を「負債」から「資産」に変える。
2026年 02月13日
設備投資を「負債」から「資産」に変える。
最新鋭マシンを“鉄の塊”にしないための運用の鉄則
数千万円の投資を行い、最新鋭のマシニングセンタを導入する。経営者にとっては、工場の未来を賭けた一大決心であるはずだ。
しかし、現実は残酷だ。導入から半年、期待の最新機がほとんど稼働せず、埃を被っている現場が少なくない。原因は明白。「担当者の退職」と、それに伴う「加工条件のブラックボックス化」である。
【実録】ある精密加工工場の苦境と逆転
特定の職人に依存した運用の結果、その職人が去ると同時に最新機は沈黙した。結局、使い慣れた旧来の機械に頼らざるを得ず、投資回収の目処すら立たない状況に陥っていた。
▼ 改善の結果(導入後3か月)
- ・稼働率:20%向上
- ・不良率:70%削減
- ・新人教育:9か月の短縮に成功
なぜ、この工場は短期間で劇的な復活を遂げられたのか。設備を真の「戦力」へと昇華させるための3つの要諦を論じたい。
1. 「属人化の脱却」と再現性の担保
第一に断行すべきは、個人の経験則に依存した「属人化の脱却」である。多くの現場では、加工条件が「あの人の頭の中」にしかない。これを徹底的に数値化し、「条件カード」として整備することが不可欠だ。
職人の「勘」を否定するのではない。その「勘」を「データ」へと置き換え、誰が担当しても同じ品質、同じサイクルタイムで加工できる「再現性」を確立する。これこそが、組織としての製造力を底上げする唯一の道である。
2. 教育のシステム化による「早期戦力化」
従来の「背中を見て覚えろ」というOJTでは、独り立ちまで1年以上を要し、その間の機会損失は計り知れない。事例の工場では、動画マニュアルと実地トレーニングを組み合わせた教育プログラムを構築した。
結果、新人がわずか3か月で主要工程を担う「戦力」へと成長した。教育を個人の資質に委ねず、仕組みで解決することが、経営における最大のリスクヘッジとなる。
3. データに基づく「停止要因」の排除
現場の「体感」ではなく、客観的な「データ」で稼働を管理すること。稼働率が低い理由を「なんとなく」で片付けてはならない。
「段取りの不備」か「工具の摩耗」か、あるいは「不具合の頻発」か。停止要因を一つずつ可視化し、優先順位をつけて潰していく。その泥臭い積み重ねが、稼働率20%向上という数字に繋がるのである。
結論:運用こそが機械に命を吹き込む
どれほど高機能な機械であっても、それを使いこなす仕組みがなければ、単なる「動かない固定資産」に過ぎない。設備を宝(戦力)に変えるのは、機械の性能ではなく、経営者の意志が介在した「運用の設計」である。
「機械が初めて利益を生み出した」
そう語る経営者の言葉は、仕組み化への挑戦が正しかったことの何よりの証明である。
こうした変化を自社で起こすために、明日から着手すべき「最初の第一歩」について解説する。