「設備」を「戦力」へ|第4回:稼働率20%向上への転換点
2026年 02月17日
稼働率20%向上への転換点:
数千万の設備を「宝」に変える運用の力
数千万円を投じて導入した最新鋭のマシニングセンタが、工場の片隅で沈黙している――。
これは架空の話ではない。ある精密加工工場で実際に起きた「投資の失敗」の縮図である。導入から半年、期待された生産性は影を潜め、現場は旧来の機械を回す日々。原因は明白だった。唯一の担当者の退職と、現場に蔓延していた「加工条件の属人化」である。
設備は導入しただけでは「資産」にならない。それを「戦力」へと変えるのは、職人の勘ではなく、組織としての運用力である。前回提示した「3つの改善視点」を具現化し、劇的な変革を遂げた事例から、我々が学ぶべき教訓を深掘りしたい。
1 「勘」を排し、再現性を担保する数値化
現場を停滞させる最大の要因は、熟練工の頭の中にだけ存在する「暗黙知」である。この工場では、まず加工条件を徹底的に洗い出し、誰が担当しても同じ精度が出せる「条件カード」へと落とし込んだ。
「属人化の脱却」とは、職人軽視ではない。職人の卓越した技術を「再現性」のあるデータに変換し、組織の共有財産にすることだ。加工条件を数値で管理し、基準を明確にすることで、不良率は平均10%超から一気に70%削減された。
2 教育をシステム化し、新人を最短で「戦力」へ
従来、1年以上の歳月を要していた新人教育を、わずか3か月に短縮した秘策は、動画マニュアルと実地訓練の統合にある。背中を見て覚えろという非効率なOJTを廃し、標準化された手順を可視化したのだ。
教育のシステム化は、そのまま経営の柔軟性に直結する。属人的な技術に依存している限り、一人の離職で数千万の設備が止まるリスクを抱え続けることになる。教育への投資は、設備を「宝」に変えるための、最も確実な布石である。
3 稼働データが示す「停止の真因」を潰す
「なんとなく機械が止まっている」という感覚的な把握を捨て、停止要因を「段取り」「工具摩耗」「不具合」に分類し、徹底的にデータ化した。「勘ではなくデータ」で現場を直視した結果、稼働率は20%向上した。
機械が稼働する「密度」を上げることこそが、設備投資の効果を最大化する唯一の道である。
「機械が初めて利益を生み出した」
― 事例工場の経営者 談
機械に命を吹き込むのは「運用」である。最新鋭の工作機械は、それ単体では単なる鉄の塊に過ぎない。そこに明確な運用基準を設け、データを積み上げ、誰でも扱える仕組みを整えて初めて、機械は利益を生む「戦力」へと変貌する。
貴社の工場にあるその機械を、真の資産に変える準備はできているだろうか。
【次回予告】
こうした劇的な変化を、自社で引き起こすための「最初の一歩」を具体的に解説します。